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19
「し、秀くん……っ?」
冬哉はまさか秀がいきなりこんな行動に出るとは思わず、驚いて彼を見る。
「ね、本当に、初めてなの?」
「……冬哉は?」
秀はやっぱり答えない。逆に質問されてしまって、ずるいよ、と口を尖らせた。
「秀くんが答えたら答える」
「………………初めてだ」
秀は少し長い間を置いて答える。答えたくなかったのが今の間で分かり、嫌だと思っている事はしない人なんだと分かると、先程秀のズボンに手をかけようとした時も、躱された事を思い出した。どうやら色事での、秀自身の話は苦手らしい。
「冬哉は?」
秀はもう一度聞いてくる。考え事をしていた事に気付き、冬哉も苦笑した。
「僕も……初めてだよ」
「……………………そうか」
そう言って、秀は冬哉に軽く口付ける。今の間は何だろう? と思っていると、冬哉、と呼ばれた。
「……今日は、止めにしないか?」
「えっ? ………………はあぁぁぁ!?」
冬哉は飛び起きる。ここまできてそれはないよと思って、秀の頬を両手で挟んだ。それでもやっぱり眉ひとつ動かさない秀の目は、じっと冬哉を見つめている。
「僕たち、今日誕生日だよね?」
「うん」
「じゃあ、特別な事したいよね?」
「……うん」
「秀くんへのプレゼント、今からあげる。僕を秀くんのものにして」
半分睨むようにして冬哉は言った。こんなセリフ、この状況じゃなければとてもじゃないけど言えない。
「僕がしたいならって言うならできるでしよ? まさか萎えちゃったとか?」
「…………いや」
服で隠れて見えないけれど、萎えてはいない事を知ると、冬哉は照れてしまった。じゃあ良いよね、と冬哉は潔く下着ごとズボンを脱いだ。ムードもへったくれもない状況に冬哉は内心肩を落としたが、相手は秀だ、仕方がない。
「……冬哉、身体が冷える」
「秀くんが温めて」
ほら脱いで、と冬哉は秀のズボンに手をかけた。観念したのか、秀はそのまま動かずされるがまま、ズボンと下着を脱ぐ。すると秀はさりげなく長めのトップスで前を隠し、冬哉に局部を見せない事に成功した。
「……恥ずかしいの?」
「……それもある」
それも? と冬哉は聞く。他にどんな理由があるのか、と尋ねると、冬哉を大事にしたい、と返ってきた。それは嬉しいけれど、と思っていると、頭を撫でられ再び押し倒された。
今度は驚かなかった冬哉。真っ直ぐ見てくる秀の瞳を見つめていたら、もしかして、と勘が働いてしまい赤面する。
「……もしかして……さ、触り合いっこじゃ、やだとか言う……?」
さすがに直接口にする事はできず、遠回しな言い方をすると、秀は、うん、と頷いた。冬哉は更に顔が熱くなり、秀の顔を見られなくなる。
しかし冬哉がしたいならと言う秀だ、その彼がここまで主張するのは珍しい。
(できれば叶えてあげたいけど……)
何せキスすら初めてだったのだ、それ以上の知識は少しは知っているものの、やはり身構えてしまう。
「秀くん? あの、……やっぱり僕、それはちょっと怖くて……」
「……そうか」
申し訳ないと思いながらも本音を言うと、彼は納得してくれたようだ。ごめんねと謝ると、頭を撫でられた。どうやらちゃんと話した事が嬉しかったらしい。
秀の顔が近付いてくる。濡れた音を響かせ何度も唇を吸われると、力を失っていた冬哉の中心も、再び熱くなっていった。
目を閉じてふわふわする快感に身を委ねていると、冬哉の分身に熱い何かが触れる。冬哉より熱く、硬いそれは、冬哉の分身にピタリと沿い、秀が冬哉の片足の膝裏を掬って上げた。それと同時に秀は更に身体を近付け、互いの怒張を大きな手でまとめて握る。
「……っ!」
この体勢では、まるで本当にしているみたいだ、と冬哉は身震いする。秀は身体を起こし、ゆっくり腰を動かした。
「……っあ!」
ビクン、と冬哉は背中を反らす。秀の熱いもので自身を擦られ、視界には腰を振る秀がいる。しかも秀の手は動きに合わせて動かしていて、こんなにも卑猥な事をするなんて、とゾクゾクした。
「秀くん、ホントに初めて……っ!?」
こんなの、こんなえっちなの恥ずかしいよぅ、と冬哉は涙目になった顔を隠す。その間にも秀の動きは少し早まり、体勢も相まって本当に繋がっているかのようだ。気持ちいいのと恥ずかしいので混乱して、本当にぐすぐすと泣いてしまう。
「いやっ、秀くん出ちゃうっ、出ちゃうからぁ……!」
すると秀は足を抱えていた手を離して、冬哉の顔を隠している腕を退けた。どうして、と冬哉は秀を見ると、前髪からチラリと見えた秀の欲情の乗った瞳とぶつかる。
あの秀が、自分を見て興奮している。普段顔色一つ変えない秀が、うっすら耳を赤くして、息を乱している……そう思った瞬間、冬哉はどうしようもなく胸がきゅっとなって、それが甘い痺れとなって腰が震えた。
そして一際大きく仰け反ると、白濁したものが胸やお腹に落ちてくる。
「あ、ああ……っ」
はぁはぁと荒い息をしながら肩を震わせていると、その唇に軽くキスされた。力尽きてぐったりしていると、冬哉、と声がかかり、まだ萎えきっていない分身を再び扱かれる。
「んッ! ちょっと……っ!」
敏感になっているそこには、秀の与える刺激は強すぎて、冬哉は思わず彼の手を取った。
そして、彼の足の間に付いた、男なら誰でも付いているモノを見てしまう。それは見るからに凶暴そうな存在感で、冬哉の全力を出しても敵わないほど、圧倒的だった。
(せ、背が高いから、比例してソコも大きいのかな……っ!? ってか、コレを入れようとしてたの!?)
「冬哉、俺はまだだ……」
秀はさすがに余裕が無い様子で、冬哉の手を取って、熱く滾った彼の肉棒へと持っていく。誘われるままそっとそこを握ると、秀は短く息を吐き、目を伏せた。
握ってしまった、と冬哉はドキドキする。自分のとは違う性器に触れたのはもちろん初めてなので、戸惑いと緊張の方が大きい。
すると秀は冬哉の手の上から自らも握り、上下に動かした。冬哉は半身を起こしてその様子を見ていて、何故か自分も、再び身体に火がつくのを感じる。
秀は前髪の奥の目をうっすら開け、冬哉を見つめた。唇も軽く開け、小さく早い呼吸を繰り返している。耳が完全に赤く染まり、時折何かに耐えるように目を閉じる姿はとても扇情的で、冬哉はそれを見ているだけでゾクゾクした。
「秀くん、すごくえっちな顔……気持ちいい?」
「うん……」
冬哉はくすくすと笑う。他の人とではこんな事までできなかったのに、どうして秀なら良いと思うのだろう? と不思議に思った。
「冬哉……」
静かに息を弾ませる秀が、冬哉を呼ぶ。ん? と顔を覗くと、彼は短く息を吐いて息を詰めた。
「あっ……」
冬哉は思わず声を上げる。秀のいきり立ったモノの先端から白濁したものが飛び出し、冬哉の胸を汚す。その熱さに冬哉は肩を震わせ、自分が出したものと混ざって、何とも言えない羞恥心が湧き上がった。
「……ありがとう」
まだ弾んだ息で秀は呟くと、冬哉に軽くキスをした。冬哉も好き、とキスのお返しをすると、胸の中がじわりと熱くなる。
「……秀くん、僕のこと……好き?」
「好き」
やっと聞けた質問に秀は即答してくれた。冬哉は微笑むと、秀は頭を優しく撫でた。
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