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第423話
秋が深まり、平地でもモミジや柿などの葉が落ち始めていた。
ここはトラ達が住んでいる “タヌキがカラスに勝った町” から一.五キロほどのところにある寺である。
ギョ~ンンンンンン…
こんな変わった音で鳴る鐘があるため、猫達から“変な音の鐘の寺” と呼ばれている寺だ。
この日、住職は境内を掃き清めていた。
夏の間は緑の葉を茂らせていた桜から、この数日でたくさんの落葉があった。
もうすぐ冬が来るんだなと、空を仰いだ時のことだ。
「あわ…」
思わず変な声が出た。
葉がまばらになった桜の、上のほうの枝に、スズメバチの巣がぶら下がっているのに気付いたからだ。大きさはメロンくらいだろうか。
どうりで今年はスズメバチをよく見る訳だ。
そんなことを考えていると、その桜の木の下を、猫が平然と歩いて行く。
「お前、そんなところよく平気で通れるな…」
猫が住職のほうを振り返った。
今さら何だと言っているように見えるのは気のせいか。
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