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――お見合いなんてしたくない!
というのが本音だが、仕方がないとも思う。
幼い頃からマイペースでぽーっとしていた杏璃は、一人遊びをすることが多かった。
現に、二十歳を過ぎた今でも推しのことしか頭になく、どこかふわふわしている杏璃のことを、女性は結婚し子どもを産むのが幸せだと信じて疑わない祖父が、このままでは行き遅れてしまうのではないか、と心配するのも無理もないだろう。
これまでも事あるごとに、祖父や伯母から誰か気になる相手はいないのか、とあからさまな探りを入れられたのも一度や二度ではない。
そのたびに、アーサー王子以外に考えられない。などと夢見心地に宣言する杏璃だったが、それがいつもでも通用するなどという甘い考えは、さすがに持ち合わせちゃいなかった。
そろそろそういう話が舞い込んできてもおかしくはない、とは思ってもいたので、さして驚きはなかったし、仕方ないという諦めもあったのだ。
だがそれは、杏璃を蝶よ花よと猫かわいがりしてきた、二人の優しい兄・海と空を除いての話である。
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