降って湧いた縁談話

5/18
前へ
/36ページ
次へ
 ――お見合いなんてしたくない!   というのが本音だが、仕方がないとも思う。  幼い頃からマイペースでぽーっとしていた杏璃は、一人遊びをすることが多かった。  現に、二十歳を過ぎた今でも推しのことしか頭になく、どこかふわふわしている杏璃のことを、女性は結婚し子どもを産むのが幸せだと信じて疑わない祖父が、このままでは行き遅れてしまうのではないか、と心配するのも無理もないだろう。  これまでも事あるごとに、祖父や伯母から誰か気になる相手はいないのか、とあからさまな探りを入れられたのも一度や二度ではない。  そのたびに、アーサー王子以外に考えられない。などと夢見心地に宣言する杏璃だったが、それがいつもでも通用するなどという甘い考えは、さすがに持ち合わせちゃいなかった。  そろそろそういう話が舞い込んできてもおかしくはない、とは思ってもいたので、さして驚きはなかったし、仕方ないという諦めもあったのだ。  だがそれは、杏璃を蝶よ花よと猫かわいがりしてきた、二人の優しい兄・(かい)(そら)を除いての話である。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

931人が本棚に入れています
本棚に追加