降って湧いた縁談話

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「父さん、杏璃にお見合いなんて、早すぎるんじゃないですかっ!」 「そうですよ! 杏璃はまだ二十二なんですから、空の言う通り、見合いなんて早すぎます!」  純和風の広い客間で父・晴臣(はるおみ)に、たった今杏璃の縁談話を聞きつけた二人の兄が詰め寄っているところだ。  まず高邑家について説明すると、先祖代々狂言師の家系で、祖父は人間国宝。晴臣もまた、いずれは人間国宝になるだろうと言われている狂言師である。  師匠である祖父と晴臣の指導の下、二人の兄も日夜稽古に励んでいる。  祖父も晴臣も、そして兄も、キリリとした和風男子で見目に優れているのもあって、しばしばメディアに取り上げられるほどの有名人である。  ちなみに、恋愛に憧れながらも杏璃がこれまで異性に興味が持てないでいたのも、見目麗しく優しい、祖父と晴臣と二人の兄の存在があったからだ。  杏璃にその自覚はなくとも、物心ついた頃からイケメンに囲まれて育てば自然と目が肥え、理想が高くなるのも至極ごもっともである。
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