降って湧いた縁談話

11/18
前へ
/36ページ
次へ
***  一方その頃、お洒落な大人の街として知られる、銀座の一等地にドドンと聳え立ち、その存在感を鼓舞するかのごとく輝きを放っている「鷹村美容整形クリニック」の院長室では、春だというのに身も凍り付くほどのブリザードが吹き荒れていた。 「……何ですか? これは」 「見ての通り、見合い写真だ」 「残業中に『大事な用がある』と言うから何事かと来てみれば。くだらない」  ここ、鷹村美容整形クリニックは、日本で五指に入る財閥系企業・鷹村グループ現当主の弟である、鷹村洋輔(ようすけ)が二十年前に開業して以来、業界トップの人気を誇る美容整形クリニックである。  洋輔はたぐいまれなる容姿を駆使して自ら広告塔となり、注目を集めただけでなく、それまでは高額とされてきた美容整形施術の低価格化を実現し、高かった敷居を取っ払った。  そしてプチ整形やリフトアップはもちろんメイク術など美容整形に限らず、コスメ業界にまで手を広げて知名度を広めてきた。  それもこれも、戦後に解体されてはいるものの現在も政財界に多大なる影響を及ぼしている、鷹村グループの後ろ盾があってこそだ。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

927人が本棚に入れています
本棚に追加