降って湧いた縁談話

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 優美で柔和な洋輔とは違い、央輔は柔和のにの字の欠片もない、無愛想極まりない、冷淡と表現するのがしっくりとくる、何ともとっつきにくい容貌をしている。  だというのに、客引きのためだと言って雑誌の取材に担ぎ出された際の写真が、放映中のアニメキャラ氷のプリンスにそっくりだとして思わぬ反響を呼んでしまった。  今では「美容界の氷のプリンス」などと呼ばれている。  ただでさえ生まれながらに、日本有数の財閥企業の御曹司という、大層な肩書きを背負わされているというのに、迷惑極まりないことだ。  幸い、央輔は現当主である父の三男坊として生まれ、家業を継がなくてもいい気楽な身分ではあるのだが、何かにつけて肩書きがついて回る。  現にたった今、その肩書きの恩恵にあずかろうと、実家である鷹村家を経由して央輔の元に縁談話が舞い込んできたのだ。  今年に入っただけでも十回は目にしただろうか。  見合い写真を忌々しげに一瞥すると長い長い溜息を垂れ流し、自身にとっては叔父でもある院長に真っ向から向き直る。  すっかり弱まっていたブリザードまでもが吹き荒れ始める。  
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