降って湧いた縁談話

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 央輔に似ているという氷のプリンスは絶世の美貌を誇る王子様なのだが、王位継承権を巡っての策略が横行する王宮育ちのため、人前では本音も見せないし決して笑わない、冷酷非道な王子である。  けれど愛するヒロインにだけ心を砕き、ただひたすらに溺愛する。  ヒロインの前でだけ見せる甘く慈愛に満ちた優美な微笑は、ヒロインだけでなく三次元の女性を魅了してやまない。  だが央輔には、これまで残念ながらそのような相手など存在しなかったし、これから先にもそんな相手など現れるとも思っていなければ、自分には必要ないとさえ思っているくらいだ。  ーー女なんて煩わしいとしか思えないのに、見合いなんてさせられて堪るか!  女性に対し負の感情しかない央輔の向けるそれはまさに、氷のプリンスさながらの、冷酷な無表情と絶対零度の冷ややかな視線である。  その視線に囚われただけで瞬時に凍結してしまいそうなほどだ。  央輔から絶対零度の視線を浴びせられた途端に、院長としての威厳を保とうとしてか、僅かにビクッとびくつかせるに留めた洋輔が、いつもの飄々とした軽口を叩いてくる。 「こーら、央輔。いつも言っているだろう? どんなに機嫌が悪くても、お嬢様方の前では笑顔を振り撒くようにって。そんな怖い顔してたら、商売あがったりだ。ほら、スマイル、スマイル」
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