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「……院長、話をすり替えても無駄です。それから、本音がだだ漏れですよ」
「機嫌を損ねた央輔の気持ちを和ませようという、優しい叔父心なんだから、そう怒るなって」
「フンッ……だったら、縁談話なんて、熨しつけて突き返してくださいよ」
「それは無理だ。相手のお嬢さんは鷹村家とも縁のある名家のご令嬢なんだぞ。角が立つ。もうすぐ三十三になるって言うのに、浮いた話がないどころか、近頃じゃ、ホモ疑惑まで持ち上がってるんだぞ。そんな噂が広まってみろ、お前目当てのお嬢様方が来なくなっちゃうだろ。俺を救うと思って、会うだけ会ってくれないか」
「嫌です!」
つい十数分前に、本日最後の施術を終えて、溜め込んでいた事務書類を片そうと副院長室の自席のデスクに向き合ったところで、洋輔により内線で呼びつけられ今に至る。
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