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洋輔から縁談話を受けるように泣きつかれているのだが、当の央輔にはまったくその気などなく、先ほどから冷たくあしらっているところである。
これまでもこうやって縁談話をかわせば、何やかんやと言いつつも、最後には央輔の気持ちを尊重してくれていた。
だが今回は少しばかり様子が違うようだ。
いつものように茶化しつつ央輔の機嫌をとる素振りを見せてはいるが、引き下がる気配はまったく見受けられない。
それどころか、今の今まで飄然とニヤついていた端正な甘い相貌からすっと笑みを引っ込め、柔和な目元を冷ややかに眇め低い声を響かせた。
その様は、さすがは血を分けた兄弟だと感心してしまうほど、現当主である父とよく似ている。
おそらく、父の意向であるに違いない。
物心ついた時分から、当主の言葉は絶対だと刷り込まれて育ってきた央輔に、否やは許されない。
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