降って湧いた縁談話

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 これまでは央輔の好きにさせてくれていたが、特定の相手をつくらず後腐れのない付き合いばかりだった二十代をとっくに通り越し、三十三を迎えた今では、女の気配すら微塵もチラつかせなくなった挙げ句、ホモ疑惑まで囁かれるようになった。    愚息がおかしな道に足を踏み入れてしまう前に何とか手を打とう、とでも考えているに違いない。  ――抜け目のない父のことだ、鷹村家にとっても多少なりとも恩恵があるのだろう。  叔父の話を右から左に受け流しながら、央輔が父の思惑を逡巡していたとおりの言葉が洋輔の口から飛び交った。 「この縁談は、実家の家業を継がずに、医者になる道を選んだ央輔にとっても、悪い話じゃない。なにせ、相手のお嬢様は、次期総裁確実と言われている大物政治家の愛娘だからな。文句があるなら、直接父親と話をつけてこい。以上、この話は終わりだ」  つまりは、この縁談は実家にとっても有益なものであるので、断るなんて言語道断。実家の家業を継がなくてもいいお気楽な身分なんだから、それくらい家のために貢献してもいいだろう、さっさと結婚して可愛い孫をもうけて親孝行しなさい。と言う意味である。
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