降って湧いた縁談話

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 気乗りしない縁談話を押しつけられてしまった央輔は、反論の代わりに洋輔を一睨みしてから脳内で悪態をつく。  ――今更、文句を言ってみたところで、どうにもならないってわかっているくせに……。洋輔さんも人が悪い。  心中で愚痴を零したところで、どうにもならないってことくらい、洋輔に言われなくとも重々承知している。  だがそうせずにはいられなかったのだ。  たぐいまれなる美貌を受け継いだおかげで、十代の頃から言い寄ってくる女性が山ほどいたため、それなりに遊んでもきたが、特定の相手ができたためしがない。  どの女性も見かけは魅力的ではあったが、交際したいと思えるほど心惹かれる相手は一人もいなかった。  いつかそういう相手が現れるかと思われたが、一向に現れる気配がないまま気づけば三十三。  その間、関係を持った相手は、皆央輔の見かけや肩書きばかりに群がってくる女ばかり。    そんな女に本気になれるはずもなく、一夜限りで終わるのが常だったが、いつしかそういう女の相手をするのにもうんざりするようになっていた。  今では気楽なお一人様時間――近頃流行だとか言うソロ活を満喫するようになっている。  相手に煩わされることのない一人の時間を謳歌している央輔にとって、結婚なんて今更しようなどと思えないばかりか、苦痛以外のなにものでもない。けれど。  ――会ったら最後、結婚は不可避だろう。  央輔は洋輔に押しつけられてしまった見合い写真を忌々しげに見下ろしつつ、これ見よがしに深くて重い溜息を垂れ流してやったのだった。
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