お見合い相手がまさかの推し⁉

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お見合い相手がまさかの推し⁉

 人生何が起こるかわからない。とはよく言うけれど、それは本当に突然のことだった。    四月吉日。麗らかな春の昼下がり。  伯母の晴子曰く、今日はお日柄も良く見合い日和にもってこいの爽やかな晴天に恵まれていた。  見合いの席の定番であるらしい、都心でも名だたる老舗ホテルとして知られている帝都ホテルの気品溢れるラウンジ。  優雅な雰囲気の漂うそこには、見合いに臨む杏璃同様、艶やかな振袖や上品な装いで着飾ったうら若き女性の姿があちらこちらで見受けられる。  品良く姿勢を正している女性の正面には、女性同様に付添人と思しき人物を伴い、クラシカルなスーツ姿の男性がお決まりのように腰を据え、にこやかな表情を浮かべて談笑に花を咲かせていた。  一般的に、静かに過ごすのがマナーとされているラウンジは、見合いのために設計されているのかと思うほどに、隣の席との間隔がゆったりととられている。  とはいえ同じ空間だ。  会話の内容に耳を傾けるまでもなく、時折にこやかな笑い声がそこかしこから耳に流れ込んでくる。  ――うわぁ、本当にお見合いだったんだぁ。ど、どうしよう? 緊張してきちゃったかも……。
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