お見合い相手がまさかの推し⁉

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 ――〝美容界の氷のプリンス〟ってどういう意味? いくら興味ないからって、適当に変なキャッチフレーズつけないでほしいんですけど……!  推し活一筋の杏璃の伯母だけあり、晴子にはミーハーな一面があった。きっと有名人でも見たのだろう。  けれど残念なことに晴子にとって、若い俳優やタレントは皆同じに見えるらしく、顔と名前が一致したためしがなかった。  だからって、杏璃の推しを持ちだしてくるのはどうかと思うけれど、今は指摘する気にもなれない。  晴子の声にゆっくり顔を上げた先に待ち受けていたのは、なんと推しーー氷のプリンスそっくりの相貌をした男性の姿だった。  その姿を捉えた瞬間。杏璃は雷にでも撃たれたかのような大きな衝撃を受け、呼吸さえも忘れて釘付け状態。  周囲からは音も消え去り、あたかも時間が止まったこの世界に、氷のプリンスと杏璃の二人だけしか存在していないかのような、そんな錯覚に陥ってしまっていた。 「噂通り、そっくりだわ~。ね? 杏璃もそう思うでしょう?」  隣の晴子から興奮した様子で鼻息荒く同意を求められても、その声は杏璃には届きはしない。
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