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――三次元にもいたんだ。やだ、どうしよう! 心臓がドキドキしすぎて胸が苦しくなってきちゃった。このまま死んじゃったらどうしよう……。
などと案じながら、三次元で推しと対面できた杏璃には、もう思い残すことは何もない。
――このまま昇天してもいいかも。
なんてことを案外真剣に願っていた。
そこに再び、晴子の思いがけない言葉が割り込んでくる。
「あら、洋輔さんじゃありませんこと?」
「お綺麗なご婦人がいらっしゃると思ったら、晴子さんじゃありませんか~」
「あら、相変わらずお上手ですこと~。オホホ」
「心外だなぁ。本心ですよ」
氷のプリンスに激似の男性のすぐ側に控えていた五十代の晴子と同年代と思しき央輔と呼ばれた美形の男性と晴子は顔見知りのようで、未だ放心状態の杏璃を置き去りに、二人は盛り上がっている。
氷のプリンスはというと、二人にまったく関心がないようで、隣のソファセットにさっさと腰を下ろし、長い足を組んでスマートフォンを弄り始めてしまった。
未だ夢現の杏璃は、その様子を食い入るように見つめることしかできずにいる。
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