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その間にも、晴子と洋輔のやり取りは続いていた。
「こちらにいらっしゃるってことは、洋輔さんもお見合いの付き添いってところかしら?」
「ええ、お察しの通りですよ」
「やっぱりそうでしたのね~」
「ええ、そうなんですよ。奇遇ですね。そう言いたいところなんですが、実は相手にドタキャンされましてね」
「あら、そうでしたの? 実はこちらもですのよ」
「なんと……! そうでしたか。なんとも妙な縁ですね~」
「ええ、本当に。同じ読みの名字といい、何かよっぽどのご縁があるのかしら」
「そうかもしれませんね~」
潜めた声で呟きながら、晴子が杏璃の様子をチラッと窺ってふふっと悪戯っぽい笑みを零していたことなど、突如三次元に現れた氷のプリンスに見蕩れていた杏璃は気づきもしない。
杏璃が我を取り戻したのは、それからしばらくたった頃だ。
「ねえ、杏璃。これはきっといいご縁に違いないわ。私たちはこれで失礼するから、頑張ってらっしゃいね」
夢現状態で呆けていた杏璃の耳元で晴子の明るい声が弾んだと思ったときには、見合いをドタキャンされた者同士で急遽お見合いすることとなったらしい、推しに瓜二つの鷹村央輔と二人きりにされてしまっていた。
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