964人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
今の今まで放心状態だったため、どういう経緯でそうなったかは不明だが、おそらく晴子の提案に違いない。
突如目の前に現れた推しもとい、推しにそっくりな央輔と同じ空間にいるという、この夢のような出来事を未だ消化できていない杏璃の脳内はパニック状態だ。
――キャー! やだ。ちょっと待ってよ! ムリムリ! いきなり二人っきりだなんて、どうしたらいいかわかんないからぁ~。
両手で頭を抱えて盛大に慌てふためいていた杏璃の意識に、央輔のつまらなそうな声が割り込んでくる。
「……よく言われるが、そんなに似てるのか?」
そのつまらなそうな声でさえも似ているのように聞こえてしまうのだから、堪らない。
しかも央輔は、珍しい生き物でも目にしたかのように、杏璃の顔を不思議そうに長身を屈めて覗き込んでいるではないか。
一五四センチという女性の平均的な身長よりも小柄な杏璃からすると、一八〇は超えているであろう央輔はもはや巨人である。
よほどのことがない限り、至近距離でその顔を拝むなど叶わない。それが目の前にどアップで迫っているのだ。そんなのビックリするに決まっている。
ーーもうダメ、死ぬ。
最初のコメントを投稿しよう!