963人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
とうとう限界点を突破してしまった杏璃は、そのまま意識を手放しかけた。
だがすんでのところで眼前にいた央輔によって抱き留められて事なきを得る。
「おいっ、大丈夫か?」
「ーーッ⁉」
なんとか意識を手放さずに済んだものの、それも束の間、央輔の腕の中に包み込まれているという信じられない状況に追い込まれたことにより、物の見事に限界点を振り切ってしまった杏璃。
今度こそ、声なき声を放ちながら央輔の腕の中で事切れたのだった。
意識を手放す刹那、どこからともなく漂ってくる甘く爽やかな香りと心地よいぬくもりとにふわりと包み込まれた杏璃は、天にも昇る夢心地を堪能していた。
あたかも二次元の世界に迷い込んでしまったかのような、そんな心地を味わっていたのだ。
***
いつしか夢の世界に旅立ってしまっていた杏璃は、目覚める直前に氷のプリンスの夢を見ていた。
ゆえに、寝ぼけていたのだ。
そんな杏璃は、側に控えている央輔の存在など知る由もなかった。
気絶した杏璃を前に、どうしたものかと思案しながら様子を窺っていた央輔の腕をぐいと抱え込み引き寄せてしまう。
「おいっ、今度はなんだ?」
突然のことに対処しきれなかった央輔は、バランスを崩して杏璃の身体を押し倒す格好となっていた。
その結果、杏璃は意図せず推しそっくりな央輔に組み敷かれ自ら抱きつく体勢となっていて、大いに慌てる羽目になる。
「ぎゃぁ⁉」
最初のコメントを投稿しよう!