降って湧いた縁談話

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 容姿にしたって、色白の小顔に、長い睫に縁取られた円らな瞳、少し丸みを帯びた愛らしい鼻、ほんのりと桜色に染まった頬、慎ましやかな唇、それらが絶妙なバランスで配置されている。  色素の薄い陶然とした肌は艶めいて美しく、黒目がちな瞳は濡れたように潤んでいる。  素材には恵まれているのだが、お洒落に興味もなく、素材を生かし切れていない、なんとも残念な杏璃である。  というのも、幼稚園から短大まで名門の女子校に通っていたのと、五歳違いの双子の兄二人が杏璃を猫っ可愛がりしてきたので、杏璃の容姿を褒め称えるような妙な虫がつけいる隙などなかったからだ。  そのうえ、幼少の頃は極度の人見知りで引っ込み思案なところもあったため、二人の兄にくっついていたので尚更だった。  その名残が今でも尾を引いていて、兄たちは少々過干渉なのではと思うほど杏璃を気にかけてくれている。  おかげで、これまで心配性の兄を筆頭に親族以外の異性と関わることなどなかった。  そんな杏璃を二人の兄が代わる代わる、可愛い可愛いといくら褒めそやしても、ご機嫌取りか身内贔屓としか思えないのも、当然と言えば当然かもしれない。
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