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「彼女も小学生から寄宿学校で、夏休みもサマーキャンプを転々として、
親とは、ほとんど顔を合わせていない生活だったから。
親との関係が・・複雑なのはわかるけどね」
久遠は手を休め、思い出を語るように
「小さい頃は、よくうちに来て遊んだよ。
俺を黒髪のプリンスと言って、将来結婚するって、宣言していたけど・・」
久遠は腰をかがめて痛むのだろう、トントンと叩きながら
「だから、俺がエミリアと付き合ったのを知ったら、メチャクチャ怒って、絶交だって」
近藤が、意外そうに顔を上げた。
「それって・・嫉妬ですか・・?」
「恋愛感情というより、家族の一員になりたかったのだろうね」
近藤の顔が下を向き、ビニール袋にビールの空き缶を投げ入れた。
「確かに彼女は未成年者で、
あなたが手を出せば、犯罪者確定ですからね」
「そうだな、俺にとっては妹みたいな存在なんだ。
でも、今の状態はちょいと心配だな」
久遠は換気のために、フランス様式の窓を開けた。
庭には白い野薔薇。
そのいくつかが、小さな花びらを風に揺らせている。
そう、それは随分と昔のような気がする。
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