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久遠はため息をつき、2階の窓を見やった。
その人は伯爵が出かけるのを、カーテンの影に隠れて、そっと見送りをしたのだろうか。
「それで、この物件の話がきたのですね。
でも、うちはホテル関係の商業施設専門ですよ。個人住宅はちょっと・・」
久遠は手をひらひらさせて
「オヤジの友達の紹介だってさ。だから、断れなかったのだろう。
でも、場所も閑静だし治安もいい。メトロとのアクセスもいい。
商社とか、貿易関係の海外駐在、ファミリーで来ている日本人ならば、向いているよ。
すぐに法人関係で、買い手がつくんじゃないかな」
久遠はアイアンワークの美しいつる草模様の手すりがついている石造りの階段を、トントンと上がった。
いつものよれよれ白Tシャツ、ジーパンで素足にスニーカー。
しかし肩幅が広く、筋肉質で鍛えていることがTシャツを通してもわかる
その後に続く近藤は、隙の無い紺のスーツ、臙脂のネクタイ、細身の眼鏡男子だ。
一見すると、二人がどのような関係なのか、戸惑うだろうが、
久遠は大手ホテルチェーンの御曹司、近藤はその秘書である。
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