ついて行ってはいけません。

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のっしのっしと2階へ上がる階段を登ると、ウサ耳男もやっぱりついてくる。 あー、やっぱうちに来るのね。 そんな気はしてたんだわ。 商店街で普通の人っぽさ比べで敗れ去った俺は、すでに諦めていたらしい。 さゆりちゃんも変わった女子高生なので、ウサ耳男の胡散臭さを全く気にせず挨拶している。 「おーうさうさ!」 そう言いながらさゆりちゃんときたら長い長い耳を、力一杯引っ張って抜けないのを確かめていた。 華奢で可憐な女子高生なのに、さゆりちゃんは滅法強くて柔道も空手も有段者なので痛いだろうにとちょっと俺は心配になった。 そんな俺の心配をよそに、ウサ耳男は胡散臭い笑顔のまま本物ですよぉ、と穏やかに主張していた。 とりあえず自己紹介らしきものも終わり、飯でも食うかとさゆりちゃんの特製オムライスを食べた。 さゆりちゃんはとっても料理が上手なのである。 腹が膨れたので、三人揃って街道沿いにある銭湯に連れ立って行くことにした。 ウサ耳男は、銭湯が初めてだったらしくキョロキョロワクワクし通しで連れてきた俺も何だかんだと嬉しくなった。 珍妙なふたりを常連客が、歓待してくれてウサ耳は風呂上がりのフルーツ牛乳で俺はラムネを奢ってもらった。 胡散臭い笑顔も慣れてきたら、そうでも無くなって喜んでいる風にしか見えなくなった。 慣れは恐ろしい。 そうこうしているうちに、三人で疲れて雑魚寝して起きたらもう出勤時間になっていた。 さゆりちゃんはいつの間にか登校時間に間に合うように、帰っていた。 さゆりちゃんは変わった子で、学校ではいじめられているようだけど礼儀正しい女の子なのだ。 それに本気になれば、ケンカで負けるはずはない強さなんだよね。 頑張ってるなと思う。 ウサ耳に今日はどうするかと尋ねると、下宿先でゴロゴロしてから近所を散歩したりして過ごすからお構いなくと言われたので、鍵かけなくてもいいから大家さんに挨拶してから出かけてねと伝えて俺は先に家を出た。
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