ついて行ってはいけません。

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今日は仕事が休みだったので、早速ウサ耳男と共に大家さんの息子の会社を訪問する事にした。 大家さんから聞いた息子さんの会社名は、その業界ではちょっと有名な正真正銘のブラック企業だった。 だけど幸か不幸か、正真正銘のブラック企業だと存外それなりの仁義ってものがあって、いわゆる縦社会の典型なのだ。 俺はとりあえず、そこの親会社を経営する社長のところに顔を出した。 以前用心棒をやった時に、たまたまこの社長の命を拾ってやった事があって以来、借りだと言っては俺に何かと良くしてくれるのだ。 俺の芸術作品の一番のパトロンでもあるしな。 本社ロビーにも、恥ずかしげもなく俺の天才的な造形美溢れる作品が堂々と鎮座している。 「何だかゴミのような作品ですね」 ウサ耳男が、何気なく呟いて通り過ぎたのはスルーした。 社長はアポなしでも、珍奇な俺たちにすんなり会ってくれた。 そこで大家さんの息子さんの話しをして、これからその会社に出向く事に対してきっちり仁義を通した。 「何だってそんなブラック企業になってんだ!」 本社の社長は、俺の話を聞くと知らなかった事が頭にきたらしく怒りまくりはじめた。 あんたの企業が元々ブラックなのとも言えないので、落ち着かせてからまあ何とかしてきますと礼を言ってその場を辞した。 社長は謝礼だといって、何だか分厚い封筒をよこしたのでありがたくそれは頂いた。 そんなこんなの根回しが効いたのか、ふたりが着いた頃にはほとんど全てが片付いていた。 突然解雇されたか、どっかに埋められたか知らないがその嫌な上司の姿はすでになく、呆然としている残された社員がそれでも黙々と業務をこなしている。 そのうちのひとりが大家の息子さんだった。 新たにやって来た幹部に話しをつけていたら、あっという間に終業時間になっていた。 息子さんは俺たちふたりの怪しさに度肝を抜かれていたようだったが、大家さんちの居候だと言ったらそういえばと思い出してくれた。 ともかく安心したのだろう、何処かでゆっくり飯でも食おうということになり三人で近くの居酒屋に行くことになった。
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