シロネコヤマトの宅急便

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荷物をクーパーに積み終え、後部座席もフラットにしてどうにか載せきれたが、細長い箱をひとつだけ、助手席の描さんが嬉しそうに大事そうに抱えたままなのは… それ私と秋ちゃんにしてよ!最近ハグもキスもしてないじゃないですか! …あ、キスは…したか、昨日…お風呂上がりに…あ、よく考えたらハグもしてもらったな…秋ちゃんには勿論ナイショで ま、まあ!あの細長い箱、なんとなーく、中身の予想はつくが… 粉末の唐辛子と胡椒を多少買い足していたのは謎のままだ。カフェで何か新メニュー出す予定あったかしら…ちょっと記憶にないんだけど…秋ちゃんかハルちゃんかシイちゃんのリクエストで辛い料理でも作るのかな?カレーも甘口しか食べられない優花ちゃんと美優ちゃん、特に辛い料理が好きでもない私にはあまり関係ない…はず… じゃあ描さん、出しますね? 一言声を掛けてから、私はクーパーのエンジンに息を吹き返してもらい、気持ちアンダーステアのステアリングをカフェ美宙へ向けて切った 我が家に向かう唯一無二のベイブリッジ(笑)に差し掛かると、そろそろ夕陽が水平線に…って、ドライブデートなら最高のシチュエーションに! 運転席からチラチラ見ながら溜め息をつく 本当は車を停めて描さんと並んで夕陽を眺めながらラブラブしたいけど… 家では万年欠食みたいな妹たちが待ってるから無理だよね… 「あ、しまった!冴香さん、忘れ物しました!戻れます?」 私の軽い感傷を吹き飛ばすように、助手席の描さんが声を掛けてくる。もう…! 仕方がないので描さんの指示通り、橋を渡り切った箇所でUターンし、再び私は愛車を本島へ向ける でも描さんが忘れ物って珍しい…事もないか…病院行くのに診察券忘れたりする人だから …ハイキャパは忘れずに持って行く人だけど… 「あ、冴香さん、停めてください!」 は、はいっ 思わず大きな声で返事をしてしまった 一方通行の橋のほぼ真ん中、描さんと私と荷物の乗ったクーパーが停車する と、助手席の描さん、いきなりシートベルトを外して車外へ ちょ、ちょっと描さん?いくら一通で他に車が来ないからって…! 私は慌ててエンジンを止める。と 運転席側に回って来た描さんが窓から手を伸ばしてきて、私のシートベルトを外した… そしてちょっと芝居がかった調子で、運転席のドアを開いてくれた わ、私今日カフェに出てる時のTシャツにデニムパンツで、全然お洒落出来てないのに!メイクだけはちゃんとやり直しておいたけど…
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