第1首 秋の田の……

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 夏の盛りが過ぎ秋の涼しい風がそよぐ中、国王であるテンジルは、お忍びで郊外にある村を訪れていた。  この辺りを治める領主の報告で、「麦畑が魔物の襲撃で壊滅し、今年は麦を納められない」とあったからだ。なんでも、巨大な魔物が出るとか出ないとかで、村人は畑にも出たがらないという──。  麦は、この国にはかかせない主要な穀物。都に納められなければ、人々が飢えてしまうだろう。  そこで、テンジルは腹心であるカターリを連れ、その真相を確かめるべくやってきたというわけだ。 「報告にあった通り、畑が荒らされているようですね」 「うむ……」  テンジルとカターリは、金色の穂をつけた麦の畑を見渡しながら顔をしかめた。所々、何物かになぎ倒されたような跡があり、場所によっては食い荒らされているところも見受けられた。 「これでは、収穫できたとしても量が乏しくなってしまうな」 「どうなさいますか?」  二人がそんな話をしていると、集落の方から数人の村人が歩いてきた。手には鍬やら鎌を携え、辺りを警戒している様子がうかがえる。 「旅の方。お二人が腰に提げているもの、剣だとお見受けしますが?」 「うむ、そうだが?」  カターリが柄に手を添えながらそう答えると、中心にいた人物が一歩前に進み出て二人に頭を下げた。 「ワシはこの村の長をつとめているものです。どうか、お願いがございます。村に出没する魔物を退治してはくれますまいか?」  カターリは、指示を仰ごうとテンジルの方を振り向いた。テンジルは静かに頷き、自ら進み出た。 「我らもその噂を聞きつけやってきたのだ。その任、承ろう」 「ありがとうございます。魔物は日が暮れた頃から現れます。夜まで、我が家にてお待ちいただけますかな?」  二人は頷き、夜まで待つことにした。
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