― 約束 ―

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― 約束 ―

「私のも聞いてくれるなら、ここに自由に出入りして好きなように過ごしてくれていい」 「え、自由にって……」 彼の言葉にむくむくと警戒心が沸き起こった。 会ったばかりのわたしにそんなことを言い出すなんて、なんだか怖い。まさか受け入れがたいような変なお願いでもされるのだろうか。いくらこの人に惹かれていたとしても、その内容によっては一気に気持ちが醒めてしまうだろう。この出会いは夢だったと思うことにして、そのお願いとやらを彼が口にする前に、この場から去った方がいいだろうか……。 彼は黙ってわたしを眺めていたが、喉の奥からくくっと笑い声を上げると、愉快そうに肩先を揺らした。 「いったい何を想像したのか知らないけれど、変なお願いなどしないよ。ただ、私の話し相手になってほしいだけだ」 「話し相手、ですか……」 頭の中を見透かされたことを恥ずかしく思ったが、わたしはほっとした。けれど、彼が望む「お願い」が意外なものだったことに首を傾げる。寂しげなこの場所に住んでいるのは、他人との接触を厭っていることが理由のひとつなのかと思っていたから。 わたしの表情を読んだのか、彼は目元を緩めて言った。 「理由(わけ)あって私はここにいるのだけれど、誰かとの会話がふっと恋しくなることがある。こんな風に君と出会ったのも、何かの縁なのかもしれない。そう思える君と一緒の時間を過ごすことができたら、私の単調な日々も色づくんじゃないかと思った。もちろん君さえ良ければ、の話だけど」
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