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大学でわたしは写真サークルに所属しているが、運転免許を取得して両親から中古の軽自動車を譲り受けてからは、以前よりもずっと活動範囲が広がっていた。そのせいもあって、祖母と同じあの場所を撮影してみたいものだと、近頃はますます思うようになっていて、場所の特定にもよりいっそう熱が入っていた。
そうだ、カメラ歴が長い写真部の人たちだったら、もしかしたら誰か一人ぐらいは知っているかもしれない。
そう思って周りに聞いてみるのだったが、みんな首を傾げるだけだった。自分だけの秘密の場所にしておきたいのかとも思ったが、そういうことでもなさそうで、本当に知らない様子だった。
祖母はいったいどこであの写真を撮ったのだろう。こんなに誰も知らないなんて、実は祖母の記憶違いか何かで、他の場所と勘違いしていたのだろうか。あるいは、今はもう花を見ることができなくなっている場所という可能性もある。だって、彼岸花に限らず花の群生地と言ったら、多少は知られていてもよさそうなものだ。
そもそも、祖母の口から明確な地名を聞いたわけではなかった。こんな所があって、こんな風景で、と、まるっきり曖昧な内容でしかなく、わたしのメモの片隅にあるそれを図示したものは、地図と呼ぶには気が引けるものだった。
それでも、わたしは簡単には諦められなかった。まるで恋でもしているかのように、どうしてこんなに執着めいた気持ちになっているのか分からなかった。奇跡的にその場所を見つけることができた時には、その訳を知ることができるだろうか。
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