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ー 雑木林 ー
その雑木林は、途中から舗装が切れた道の奥まった場所に広がっていた。
周辺にはススキやセイタカアワダチソウ、他にも様々な名前の知らない低木や雑草があふれるように生い茂っている。この少し先には稲刈りを待つ田んぼが見えたから、いわゆる私道、農道なのかもしれない。
向こう側から車が来たらまずいよね――。
わたしはきょろきょろと辺りを見渡す。
車を止めるのにちょうど良さそうな一角を見つけたわたしは、慎重なハンドルさばきでその場所に車を寄せた。こういう時、軽自動車で良かったと思ったりする。
時折さわさわと草や木の葉が擦れるような音が聞こえてくる他は、音らしい音は聞こえない。
カメラは一応持って行ってみるか。
わたしは車を降りると、カメラバッグと貴重品を入れたミニバッグを肩にかけた。
少し辺りを歩いてみようと道に沿って行くと、数歩も行かないうちに木の看板のようなものが倒れているのを発見した。だいぶ朽ちてしまっていて、何が書かれていたのか分からない状態だった。
さらに数歩ほど進むと、今度は木の根元に小さな祠を見つけた。所々ぼろぼろだったが、周りの雑草はそれなりに取り除かれているようだ。時折誰かがお参りに来ているのかもしれない。
「あ、もしかして、道?」
その祠のすぐ近くに、まるで入り口のように繁みと繁みの間が開いている場所をみつけた。近づいてみると、まるで獣道のようだ。
入ってみようかどうしようか、考え込んだ。
しかしよく見ると、雑木林の内側は思いのほか明るく、見通しはそんなに悪くはない。木々の間を透かしたずっと向こう側に、屋根のような形状のものがあることに気がついた。
わたしは決めた。
行ってみよう――。
ふと幼馴染の良平の顔が浮かんだ。
怖いもの知らずだとか無謀だとか無鉄砲だとか、良平の小言が聞こえてきそうだ。
わたしは苦笑しながら、林の中へと足を踏み入れた。
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