― 団欒 ―

1/5

148人が本棚に入れています
本棚に追加
/117ページ

― 団欒 ―

「ただいま~」 元気な声と足音が近づいてきた。リビングに姿を現した足音の主は、わたしを見るなり声を上げた。 「あれっ、みやびちゃんだっ!久しぶりじゃん!」 良平の弟、渉だ。高校一年生のやんちゃ盛りだ。一人っ子のわたしにとっては、弟のようにも思える存在だ。 「ほんと、久しぶりだね。渉くんは相変わらず元気そうだね。なんだか背がすごく伸びたんじゃない?」 良平も上背があるけれど、渉もそれに迫るくらいにまで成長していた。中学の頃までは、わたしとあまり変わらないくらいだったのに。 「成長期だからね。しっかし、みやびちゃんは相変わらず可愛いなぁ。ねぇねぇ、彼氏とかできた?」 わたしは苦笑いを浮かべた。 「いないよ。残念ながら」 「マジで?だったら俺、立候補しよっかな」 「おい、渉、とりあえず着替えて来いよ」 良平が呆れたように、暴走気味の弟を止める。 「兄ちゃんってば、ヤキモチ焼いちゃって」 「わ、た、る」 良平の低い声に、渉はくすっと笑って肩をすくめる。 「はいはい」 そう言うと渉はわたしにひらっと手を振り、二階の自分の部屋と上がって行った。 「渉くん、相変わらずだね」 「高校生になったんだから、もう少ししっかりしてくれたらいいんだけどねぇ……」 取り皿やお箸を運びながら、おばさんが苦笑交じりに言った。 「逆に良平はもうちょっとねぇ……」 「なんだよ」 「ん~、渉と足して割ればちょうどいいのかなぁ、なんて思ってね。まぁ、いいわ。渉が降りてきたら、ご飯にしましょ」
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

148人が本棚に入れています
本棚に追加