148人が本棚に入れています
本棚に追加
/117ページ
― 団欒 ―
「ただいま~」
元気な声と足音が近づいてきた。リビングに姿を現した足音の主は、わたしを見るなり声を上げた。
「あれっ、みやびちゃんだっ!久しぶりじゃん!」
良平の弟、渉だ。高校一年生のやんちゃ盛りだ。一人っ子のわたしにとっては、弟のようにも思える存在だ。
「ほんと、久しぶりだね。渉くんは相変わらず元気そうだね。なんだか背がすごく伸びたんじゃない?」
良平も上背があるけれど、渉もそれに迫るくらいにまで成長していた。中学の頃までは、わたしとあまり変わらないくらいだったのに。
「成長期だからね。しっかし、みやびちゃんは相変わらず可愛いなぁ。ねぇねぇ、彼氏とかできた?」
わたしは苦笑いを浮かべた。
「いないよ。残念ながら」
「マジで?だったら俺、立候補しよっかな」
「おい、渉、とりあえず着替えて来いよ」
良平が呆れたように、暴走気味の弟を止める。
「兄ちゃんってば、ヤキモチ焼いちゃって」
「わ、た、る」
良平の低い声に、渉はくすっと笑って肩をすくめる。
「はいはい」
そう言うと渉はわたしにひらっと手を振り、二階の自分の部屋と上がって行った。
「渉くん、相変わらずだね」
「高校生になったんだから、もう少ししっかりしてくれたらいいんだけどねぇ……」
取り皿やお箸を運びながら、おばさんが苦笑交じりに言った。
「逆に良平はもうちょっとねぇ……」
「なんだよ」
「ん~、渉と足して割ればちょうどいいのかなぁ、なんて思ってね。まぁ、いいわ。渉が降りてきたら、ご飯にしましょ」
最初のコメントを投稿しよう!