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久しぶりの大人数での食事は楽しかった。
後から帰宅したおじさんも一緒になって、なんだかんだで、良平の家を出たのは十時を回っていた。
「送りオオカミになったらだめよ」
わたしを家まで送るために玄関に降りた良平に、おばさんはそんな冗談を投げかける。
「何言ってんだか」
苦笑しながら母親の言葉をさらりと流すと、良平はわたしを促す。
「行くか」
「うん。じゃ、おばさん、今日はご馳走さまでした。おやすみなさい」
「どういたしまして。みやびちゃん、本当にいつでも来てね。良平なんかどうでもいいから、私に会いに来てちょうだいよ」
「はい。そのうちにまた」
「ほら、行くぞ」
名残を惜しむようなおばさんから引き離すように、良平はわたしの肩を抱いて玄関から押し出した。
外に出てもまだ、良平の手が肩に乗っていた。わたしは短く言う。
「良平、手」
「あ、わるい」
全然そう思っていない様子で、良平はすぐに手をどけた。
これまで良平のことなんか意識したことはない。こんな風に触れられたことだって、普通にあった。それなのに、なぜか今、少しだけどきっとしてしまった。
帰り際に、おばさんがあんなことを言ったせいだ――。
わたしはそう結論づけた。
「別に送らなくてもいいよ。近いし」
「そう言うわけにはいかないの。危ないだろ。お前は隙だらけなんだしさ」
良平はわたしの歩幅に合わせるように、ゆっくりと歩き出した。
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