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その隣を歩きながら、わたしはふうっとため息をついた。
「真奈美もそうだけど、良平ってホント、過保護だよね。わたし、もう、子どもじゃないんだけどな。そんなに頼りなく見えるかな」
「あぁ、そう見える。だから心配なんだよ。俺も真奈美も」
そう言ってわたしを見る良平に、苦笑しつつ礼を言う。
「とりあえず、ありがと」
良平はわたしから視線を外して、ふっと夜空を見上げた。
「こうやって二人で歩くのは、ずいぶん久しぶりな気がするな」
「そうかもね。良平の家に行ったのも、久しぶりだったしね。楽しかったよ」
「それなら良かった。――そう言えば、今日はもともと用事があったんだったな。それ、結局キャンセルしたんだろ?」
「あぁ、うん……」
わたしは夜空を見上げた。
―― 今頃あの人はどうしているだろう。
闇色の空に浮かぶ月の姿に、是周の顔を思い出した。
わたしが来なかったことを、怒っているだろうか。連絡したくても、わたしは彼の連絡先を知らなかった。
だから仕方がない――。
そう思うことで、約束を破ってしまったことを正当化しようとした。しかし、もし。
このことで彼に嫌われたらどうしよう――。
そう思ったらにわかに不安が広がって、心がそわつき出した。
良平の声がした。
「みやび?大丈夫か?」
わたしははっとして、慌てて取り繕う。
「お腹いっぱいになって、眠くなってきちゃったみたい」
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