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「子どもかよ」
苦笑を浮かべて良平は言った。
「ホント、悪かったな。なんか、強引に誘った感じになってさ」
「うぅん、楽しかったし、美味しかったし。お父さんの転勤にお母さんがついて行ってからは、うちにわたし一人でしょ。もう二年目だし慣れたけど、時々ちょっとだけ寂しいなって思うこともあったから。それに食事もね、一人分を作るのってなんか面倒で、いつも手抜きご飯だったんだ。だから、おばさんには感謝してるの。もちろん良平にもよ」
「そっか」
そんなことを話しているうちに、私の家に着いた。
「ありがとね、わざわざ送ってもらっちゃって」
「気にするなって。だいたい今さらだろ」
「そうだったね……でも」
「ん?」
「いつまでもこれじゃだめだよな、って思ってさ」
良平が首を傾げて続きを促す。
「何が?」
「いつまでもこんな風にさ、良平とか真奈美に心配されるっていうのも、なんかね。いい加減そういうのから卒業しないと。だってこんなことしてたら、良平だって、いつまでも彼女できないじゃない」
良平はぷいっと横を向いた。
「俺のことはほっとけ」
「なによ、可愛くないな。あ、こんな所で立ち話は良くないわね。じゃ、良平、ありがとね。またね」
わたしは玄関のドアノブに手をかけた。
「あぁ、おやすみ……あのさ」
「ん?」
良平の声に、私は振り返る。
「いや、何でもない」
「そう?おやすみなさい」
「あぁ、また学校でな。戸締りちゃんとしろよ」
そう言って、良平はわたしが玄関の内側に姿を消すまでそこに立っていた。
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