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雅允の気配が消えると、是周はわたしに訊ねた。
「昨日、来なかった理由を聞いてもいいだろうか」
あっさりと許してくれたが、実は少し気にしているのかもしれないと思った。今日は彼に謝るために来たのだ。そもそも隠すようなことでもないから、わたしは体を起こして答えた。
「――幼馴染の家に行っていたんです。彼のお母さんから急に食事に誘われて、色々あって断るわけにもいかなくて……。あ、そのお母さんは、わたしが子どもの頃から可愛がってくれていた人なんですけど」
「幼馴染?彼……」
つぶやくように言って、是周は片方の眉をわずかに上げた。
「男……?」
彼の声音が低くなる。
「え、えぇ……でも、あの」
変化した彼の口調に戸惑う。
もしかして、その幼馴染、つまり良平と何かあるのではないかと誤解している――?
わたしは恐る恐る説明した。
「あの、その幼馴染とは何でもなくて、兄と妹のような関係なんです。恋愛感情はお互いに全然持っていませんし、是周さんが思うようなことは何にもないんです」
「そうだろうか……」
と彼はわたしを抱き締めた。
「みやびが何とも思っていなくても、彼の方はそうではないかもしれないよね」
「まさか、あり得ない」
と、思わず笑ってしまう。良平がわたしに恋愛感情を持っているだなんて、考えられない。
「あり得ない、ってどうしてそう思うの?確かめたわけではないんだよね。――そんな男がみやびの近くにいるなんて」
そう言うと彼はわたしに口づけた。
「ん……んん……」
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