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どこ?
わたしはその場所を確かめるために両耳に意識を集中し、その水音がずっと先の方から聞こえてくるようだと見当をつけた。
そういえば――。
わたしはふと、この一帯の風景に気がついた時のことを思い出した。あの時、遠目ではあったけれど、林に沿うように川が流れていることが見て取れた。そうなるとこの水音は、その川の方から聞こえてきていると考えられる。
そうであれば、このまま進んでみようか――。
わたしの中で好奇心がむくむくと湧き起こった。
そこにどんな景色が広がっているのかを見てみたい。せっかくここまで来たのだ。この際行ける所まで行ってみよう。
つい先ほど感じたばかりの心細さは、いったいどこへ行ってしまったのか。その切り替えの早さに自分でも苦笑してしまったが、好奇心に勝てるわけがないのだ。
一人でそう納得し、先へ進むことを決めたわたしは、首にぶら下げたままだったカメラをバッグに仕舞いこみ、この先にあると思われる川を目指して再び歩き出した。
進んで行くうちに、自分の周りの明るさが徐々に変わりつつあることに気がついた。目の前にぱぁっと開けた光景が現れたのは、それから程なくしてのことだった。
木々が途切れたその場所には、初秋の日差しがまぶしいほどに溢れていた。
それまで直射日光の届かない林の中を歩いていたわたしは、反射的にぎゅっと両目を閉じる。それからゆっくりと瞼を上げると、わたしの口からは感嘆の声がこぼれた。
「わぁ……」
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