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― 嫉妬心 ―
わたしは彼の胸を押しながら、その唇から逃れた。
「待って……。あの、まさか、その……」
「何?」
彼は物足りないというように、話そうとしているわたしの口元に口づける。
「もしかして、嫉妬したり、とか……?」
是周はわたしの目を覗き込み、微笑んだ。
「なぜ嫉妬しないだなんて思うの」
そう言うと彼は再びわたしの唇を塞ぎ、首筋を撫でるように指を這わせ始めた。その指を徐々に下へと滑らせて、ワンピースの胸元に手をかける。その間も彼は、熱い口づけでわたしを溶かそうとした。
その心地よさに身を委ねたい――。
次第に気持ちが高まり出す。わたしは彼の首にしがみつくように腕を回して、彼に応えようとした。
しかし、つと是周は唇を離す。彼はわたしの耳を指先で弄びながら、囁き声で言う。
「君は自分がどれだけ他人を引き付ける存在なのか、考えたことがないの?」
「え?」
わたしは潤みかけた目で、彼を見返した。
「今までわたし、男の人から声をかけられたことなんか、ありませんけど」
是周は苦笑を浮かべて、わたしの頬に触れた。
「それはもしかすると、みやびの身近にいた誰かが、君を守っていたのかもしれないよ。例えば――その幼馴染とか、ね」
「そんなこと」
あるわけがない――笑いながら言おうとして、ふと思い出す。
いつもわたしの近くには真奈美と、そして良平がいた。
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