― 嫉妬心 ―

1/7

148人が本棚に入れています
本棚に追加
/117ページ

― 嫉妬心 ―

わたしは彼の胸を押しながら、その唇から逃れた。 「待って……。あの、まさか、その……」 「何?」 彼は物足りないというように、話そうとしているわたしの口元に口づける。 「もしかして、嫉妬したり、とか……?」 是周はわたしの目を覗き込み、微笑んだ。 「なぜ嫉妬しないだなんて思うの」 そう言うと彼は再びわたしの唇を塞ぎ、首筋を撫でるように指を這わせ始めた。その指を徐々に下へと滑らせて、ワンピースの胸元に手をかける。その間も彼は、熱い口づけでわたしを溶かそうとした。 その心地よさに身を委ねたい――。 次第に気持ちが高まり出す。わたしは彼の首にしがみつくように腕を回して、彼に応えようとした。 しかし、つと是周は唇を離す。彼はわたしの耳を指先で弄びながら、囁き声で言う。 「君は自分がどれだけ他人を引き付ける存在なのか、考えたことがないの?」 「え?」 わたしは潤みかけた目で、彼を見返した。 「今までわたし、男の人から声をかけられたことなんか、ありませんけど」 是周は苦笑を浮かべて、わたしの頬に触れた。 「それはもしかすると、みやびの身近にいた誰かが、君を守っていたのかもしれないよ。例えば――その幼馴染とか、ね」 「そんなこと」 あるわけがない――笑いながら言おうとして、ふと思い出す。 いつもわたしの近くには真奈美と、そして良平がいた。
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

148人が本棚に入れています
本棚に追加