― 嫉妬心 ―

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例えば。 高校は別々だったけれど、時々良平が迎えに来たりしていた。曰く、帰り道は危険だから、と。 わたしが通っていたのは女子校だったから、ちょっと、いや、だいぶ悪目立ちしていた。何度か言ってようやく、良平は迎えに来るのを渋々やめてくれたのだった。 その代わりに、帰宅後の連絡を必ず入れるようにと約束させられた。何か交換条件があったのかもしれないが、忘れてしまった。 とは言え、今にして思うと、それに素直に従っていたわたしもわたしだ。 幼馴染の二人とは同じ大学に入ったが、まるで昔に戻ったかのように、学内でもどちらかと一緒にいることが多かった。 そんなこともあって、案の定誤解を招いた。クラスやサークル内では、わたしと良平がつき合っていると思っている人が結構いた。そうではないと説明もしたが、皆んな半信半疑であまり納得した顔はしていなかった。 「何、思い出してる?」 是周がわたしの耳を噛んだ。 「なんでもないです」 「今、その幼馴染のこと、考えていたよね」 「そ、そんなことないです」 「君は考えてることが顔に出る。隠しても無駄だよ」 是周はわたしを真正面に座らせると言った。 「他の男のことなんか考えないで。私だけを見て」 今夜も月が綺麗なのだろう。薄暗い部屋の中、障子の外からぼんやりと入ってくる青白い光が、彼の横顔を淡く照らす。見返したその瞳には、わたしが写りこんでいた。 「わたしが見ているのは、いつだってあなただけです」
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