― 嫉妬心 ―

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「今のはどういう……」 まだ整わない息のまま、その言葉の意味を訊ねようとして、わたしは咳き込んだ。 「大丈夫?」 是周は、先ほど雅允が置いて言った茶器に手を伸ばした。 「もう冷めてしまったけれど、とりあえずこれを」 わたしは彼に手伝われて体を起こして、湯呑茶碗に口をつけた。 「ありがとうございます。……あの、さっきの言葉って」 湯呑茶碗を床の上に置くと、わたしは改めて訊ねた。彼が言ったことを、そのまま流してはいけないような気がしたのだ。 しかし是周はふっと笑ったきり、そのことには答えない。 答えを促すように見上げるわたしの体に、彼は指を走らせながら言った。 「湯を使っておいで。雅允に準備させるから」 はぐらかされたのだと思いはしたが、わたしは今の状況にはっとする。床に落としていた下着を慌てて拾い上げ、胸元を隠した。 「あの、大丈夫ですから」 「私としては、みやびが今夜の証を残したままにしておいてくれるのは、とても嬉しいけれどね。でもだいぶ乱れさせてしまったから、綺麗にしておいで」 そう言われて、わたしは全身がカッと熱くなった。 「恥ずかしい……」 そう言葉をもらすわたしに、彼は口づけした。 「そんな君もきれいだったよ」 「やめてください……」 是周の腕の中でわたしは身を縮こまらせた。 その時、静かに戸を叩く音がした。 「雅允?」 すっと戸が開いたそこには、雅允がやや伏し目がちに正座していた。 「湯の用意を頼む。みやびに使わせたい」 その理由を彼がどう思ったかを考えると、恥ずかしくそちらに目を向けられない。わたしは彼からできるだけ見えないようにと、是周の胸にぴたりと寄り添った。
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