― 嫉妬心 ―

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雅允に案内された浴室でお湯を使いさっぱりしたわたしは、彼が用意してくれた着物――浴衣だろうか――をまとって、是周の待つ部屋へ戻った。 「わたしの着物しかなくてすまない。でも、可愛いらしいよ」 「ありがとうございます。是周さんは、本当にほめるのが上手ですよね」 こんな風に、特に男の人から真っすぐに誉め言葉を向けられたことがない。わたしは照れながら苦笑する。 そんなわたしを見て、彼はくすりと笑った。 「上手?本当のことを言っただけだよ。……さて、口に合うといいんだけど」 雅允に用意させたのだろう、お茶と菓子のようなものがあった。お腹が減ったとか、何か口にしたいとかいうのはなかったが、せっかく用意してくれたのだからと、ほんの少しだけそれを食べた。 是周はただ黙って、優しい笑みを浮かべてわたしを見ていた。 このまま泊まっていけばいい――。 そんな言葉を少し期待したが、是周は何も言わない。 自分からそう言おうかとも思った。けれど、もしも拒否されたら悲しいと思い、その気持ちを飲み込んだ。 気を紛らすように、わたしは障子に映る淡い光に目をやる。だいぶ夜が深まった時間帯だろうか。 この部屋には時計が見当たらなかったから、今が何時なのかはっきりと分からない。 つと立ち上がって、バッグに入れていたスマホを見たが、なぜか電源が落ちていた。再起動しようとしたが、なかなか画面が立ち上がらない。
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