― 疑念 ―

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わたしはいつもの部屋でひとり、寛いでいた。 是周より先にお湯を使わせてもらい、今身にまとっているのは彼の着物。その腕の中にいるようでどきどきする。 あの後わたしたちは、手を繋いで川べりを歩いた。 そのうちに、どちらから言い出したわけでもなく、子どものように遊んだ。大人になってみればくだらないと思えてしまいそうな、他愛ない遊びだ。形の綺麗な石を探したり、小石を投げ合ってどちらが遠くまで飛ばせるかを競い合ってみたり――。そんなことをしていたら、わたしも彼も着ているものが濡れてしまった。 なかなか川から戻ってこないことを気にして、雅允がやって来た。 わたしたちの姿を見ると、彼は呆れたように顔をしかめた。けれど最後には諦め顔でわたしたちを縁側の方へと追い立て、拭く物や着替えなどを用意して湯を準備してくれた。 是周はまだお湯を使っている最中のようだ。 ところで今は何時頃だろう――。 ふと思って時計を探すが、ここにはないことを思い出した。スマホを取り出して確かめようかと思ったが、それもやめた。ここにいる間は電源を切ることにしたのだった。近頃スマホの調子が少し悪いということもあったが、それ以上に、是周との時間を誰にも邪魔されたくなかった。
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