それはスパダリ攻めと誘い受けですね

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◇◆◇◆  はっと気が付いて目を開ければ見知らぬ天井、ではなく天蓋。  ――ここ、どこ?  日本という国に住んでいた時の夢を見ていたような気がする。だけど、ここがあの『ひかきみ』の世界であったことを思い出す。だが、この場所がどこであるか、ということだけは思い出せない。  もそもそとジーニアが温かい毛布の中で動くと、その擦れた音に気付いたのか、誰かがやってくるような気配がした。 「お気づきになられましたか」  突然、女性の声でそう言葉をかけられてしまったら、ジーニアも「ひっ」と驚いてしまう。だけどその女性がとても優しそうに微笑んでいたので、ジーニアもちょっとだけ安心する。 「あの……」  と言いながら身体を起こそうとすれば、背中に激痛が走る。 「動かないでください。どうぞそのままで。今、呼んでまいります」  謎の優しい女性はそれだけ言葉を残して、この謎の部屋から出ていった。  一人、寝台の上で仰向けになっているジーニア。先ほどの感覚では、背中に体重がかかっているこの状況はよくないような気がするのだが、だけど身体を動かそうとすれば先ほどのように激痛が襲う。  さて、次第に明るくなっていく脳内。何が起こったかを思い出そうと必死になってみる。  ――ここはどこ? (『ひかきみ』の世界)  ではなくて、この場所。どこかと自問自答してみるが、どこかわからない、という答えにいきつく。  では、このような状態になる前に、自分は何をしていたのか。  ――ああ、そうだ。卒業パーティに参加していたんだわ。  ヘレナと共に学院の卒業パーティに出席していた。偉い人の激励の話という薀蓄話も終わり、乾杯の儀へと進んでいたところ。クラレンスはシリルからグラスを受け取ったものの、彼の隣にいたモブ的偉い人の動きが気になっていたら――。  ――私、斬られた? 刺された?  バルコニーの方からクラレンスに向かって何かが飛んできたことに気付いた。それはあのモブ的偉い人が合図をしたからだ。せっかくシリルから毒入りじゃないグラスを受け取ったクラレンスなのに、予想外のアレで命を奪われてしまってはヘレナとの約束を守ることもできない。いや、クラシリを拝むことができない。  と思ったら身体が勝手に動いた。  他の人は乾杯の儀の準備で、モブ的偉い人の動きとその視線の先にある怪しげな人影にも気付いていない。だから、何かが飛んできたことにさえも気付いていない。  気付いたのはジーニアだけだったのだ。これぞ、愛。さすが腐の愛。腐愛と呼びたいくらいだ。  ジーニアに、ジェレミーのような機敏な動きがあれば、その飛んできたものを足蹴りや手刀でバシュッとかっこよく軌道を反らすことができただろう。だが、ジーニアはジーニア。中の人の記憶があったとしても、中の人も格闘技やスポーツをやっていたような人物ではなく、ただの腐女子であったため、やはり機敏な動きはできない。できることといえば、その身を挺してクラレンスを飛んできた何かから守ることだけだった。
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