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あの世に行ってからも
ある日の夕食後の家族団欒の時間に、それは起こった。
まだ仕事から帰宅していない夫の良行さんを除いた、家族5人でデザートのお菓子を食べていたところだった。
義父の良太郎さんは真っ先にあんこのおはぎを食べ終えて、手持ちぶさたを誤魔化すためにテレビを見ているフリをしている。
息子の智は、あっという間に食べ終えて二階に行ってしまった。
「いいわね? 私が今から言うことをよ~く聞いてちょうだい」
義母の秀子さんは真剣な表情で、娘のみさきと私を見比べながら言葉を続けた。
「私とお父さんは絶対に同じお墓に入れないで! 死んでからも一緒なんて絶対に嫌だわ」
15年近く同居しているため、以前からこういう話はよくあがる。
秀子さんは、本当に良太郎さんのことを毛嫌いしているわけではないように感じられる。
だが、ずっと一緒にいて何十年間も面倒を見ているので、せめてあの世に行ってからは自由が欲しいのだそうだ。
気持ちは全くわからないわけでもない。
「わかった。でも、いざその時になったら混乱して思い出せないかもしれないから、書いといてよ。
ほら、この前も亡くなった時にすぐ知らせて欲しい人と、後で知らせて欲しい人をまとめておいてくれるって言っとったじゃん」
「あら、そうだったわね。じゃあ、そのノートに書いとくわね」
大好きな草餅を食べ終えたみさきがやっと口を開く。
「ねー、ばあちゃん。もしも一緒のお墓に入れちゃったらどうなるの?」
「毎晩化けてでるわ」
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