銀杏の光は永遠に ~秋山ヴィオラは、窓際でまどろむⅢ

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「ヒカルさんは妊娠していません。この恋は片思いです」  ヴィオラは、凜とした声で言い切った。 「なぜ……そう言えるの?」 「まず手紙はお腹の子に一言も触れていません。妊娠していたら一番に恋人に告げたい事実ではないでしょうか。次に許されない関係と先生が強く止めた、応忍の先生と結婚すると書かれている点です。そして二人が噂話に申し開きをしなかったこと。ヒカルさんの名誉を守ろうとしたと思いますが、そこは仮説でお話できません。でも仮説が正しければ三人に手紙で書かれた以上の落ち度はありません」  それから、優しく微笑む。 「純朴な高校生がカッコいい先生に片思いをした。そこはよくある青春物語なんです。ご両親を信じてください」  畠山さんは、ヴィオラの瞳を見つめてから、ふうと息を吐いた。 「わかった。秋山さんがそう言うのなら事実でしょう。私はパパとママの子なんですね?」 「ええ。たった一人の授かり子だから愛されたと思います」 「ありがとう。秋山さんのお陰で心の重荷が下りた気がする」  畠山さんは笑顔を戻し、あたしとヴィオラに握手した。
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