銀杏の光は永遠に ~秋山ヴィオラは、窓際でまどろむⅢ

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<芦乃原高校にヒカルという市内でも評判の美少女がいた。  ヒカルは教師Aと禁断の関係になった。Aは女性教師Bと婚約し、BはAの浮気を知っていた。  ある秋の日、Bは芦高の裏庭でヒカルが更衣室から見ているのを承知でAにキスを迫った。嫉妬したヒカルは現場に乗り込みAにキスした。Bが密告し、ヒカルは退学となった。  身ごもっていたヒカルは心を病み、二人がいた銀杏の下に呪いの札を埋めた。「ここで恋する男女、生まれる全ての子が不幸になりますように」……> 「あれ? 話が全然違う」  共通点は多い。だが芦高の伝説は悲恋、応忍では三角関係と女の嫉妬が強調されている。ヒカルが埋めたのは芦高では恋のお守り、応忍では呪いの札だ。 「どちらにせよ罪深い教師だな」と先輩がつぶやく。畠山さんが目を伏せた。 「応忍ではBは応忍教師で、『芦高生から銀杏の下で告白を受けるな、呪われる』と伝わっているんです」  記事の写真は芦高裏庭、晩秋の銀杏だ。地面は黒土、左の校舎は今と同じ。右奥に四角い銀色の機械、脇に小さな山。左奥に体育館、自転車置き場、雨よけの大きなトタン屋根。  十五年後の今もあるのは銀杏と校舎、体育館だけだ。 「では裏庭を案内しましょう」と先輩が言うと、新聞をじっと見ていたヴィオラが頭を上げる。 「前田さん。他校の新聞部が取材に来たらどうしますか」 「協力するよ。お互いさまだし」  そこで先輩は気づいた。 「そして記事にする、か……なるほど」  パソコンでファイルを検索した。 「あった。十五年前、記事が二本ある」  全員でモニターをのぞきこむ。
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