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▽裏庭の銀杏に呪い伝説?
応忍学園高校新聞部員五人が本校を訪問した。目的はヒカルという本校生徒の学校伝説という。応忍では「呪いの銀杏伝説」と有名で、裏庭の写真を撮ったり校舎の見取り図を作ったりした。
短い記事だ。次は一か月後、堂々のトップ記事だ。
▽銀杏伝説の真偽は? 本校新聞部の調査結果
本紙の記事後、話題沸騰の銀杏伝説を総力で検証した。
数年前に男性教師Aが応忍の女性教師と結婚したことは確認した。しかしヒカルという女子生徒の名前はなかった。当時を知る教頭先生は一部事実と認めたが、詳細は個人情報を理由に断られた。新聞部は銀杏の木の周り半径五メートルを掘ったが、お守りや札はなかった。
伝説の真偽は不明である。応忍の学校文化は尊重すべきだろう。本校は悲恋の物語を学校文化として語り継ぐべきと考え、伝承と事実を確認できた範囲で物語をまとめる――。
その後の伝説は今の芦高伝説と瓜二つだ。
「ヴィオラ。お守りの文言って後の尾ひれかな」
「うん、埋めたと噂されれば文言は勝手に生まれる。応忍の『市内で評判の美少女』や呪いも創作でしょう……でも、おかしいわ」
「何が?」
「芦高の伝説は二十年前からが通説なのに、十五年前の新聞部は伝説を知らないみたい。でもひと月後には『悲恋の物語を語り継ぐべき』になっている」
「ホントだ」
「伝説は逆輸入されたのかな」
「逆輸入?」
「応忍新聞部が取材に来たとき芦高に銀杏伝説はなかった。でもヒカルさんの悲恋話は断片的にあって、記事が出て伝説化したのかも」
畠山さんが「応忍の方が真実ってこと?」と尋ねる。前田部長が首をかしげた。
「応忍版は下世話で噂話っぽく、芦高版は淡々と素っ気ない。新聞部の先輩なら取材事実を優先し不明部分だけ伝承を引用したと思う」
ヴィオラもうなずく。
「教頭先生の証言にヒカルさんの名前、お守りの文言などの伝承を加えたのでしょう。ただ記事の最後を読むと芦高では悲恋話の方が説得力があったようですね」
先輩が目を光らせた。
「面白い。調べる価値はありそうだ」
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