銀杏の光は永遠に ~秋山ヴィオラは、窓際でまどろむⅢ

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「ねえ。この機械何かなあ」  ヴィオラは「ああ、それ」と、気乗りしない声を出してから。 「そういうことか」と、校舎を見た。 「え、何?」 「乃々ちゃん、十五年前の秋と今の違いは?」 「だから百葉箱の場所に機械があるよ。あと校舎側に自転車置き場と、今はないトタン屋根がある」と答える。 「他には?」  先輩が助け船を出した。 「地面に銀杏の葉がほとんどないな」 「葉は用務員の方が処分していたのですね」  ヴィオラが機械を指さす。 「これ学校焼却炉です。写真の外にたぶん煙突がある」 「焼却炉?」 「昔はどの学校にもごみを燃やす焼却炉があった。だけど灰に残るダイオキシンが社会問題になって全国で廃止されたの。芦高はその跡に百葉箱を建てたんだわ。脇の山は、たぶん集めた銀杏の葉」  ヴィオラは裏庭を歩き、写真の三角山の位置に立った。 「ここに銀杏の葉の専用置き場があった。毎年同じ場所に積まれるから目印になったのよ」 「僕、スコップを借りてくる!」  先輩が、職員室に駆けだした。  まもなく先輩が戻り、ヴィオラの足元を掘り返す。五十センチほど掘ると先が「こつん」と音を立てた。  古い牛乳瓶だ。表面は薄汚れ、口にコルク栓。引き抜いて逆さに振ると、少量の土と畳まれた古い便箋が出てきた。  便箋を開くと、お嬢様らしい楷書体の伝言が綴られていた。
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