報道

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私はショウに 急いで連絡をかけた。 プルルル……プルルル…… その機械音が鳴り響くだけで 一向に出る気配は無い。 彼女の他殺事件を見て 私はずっと抱えていた疑問が すっと消えていくような感覚と 同時に胸に黒く闇がかかったような 大きな不快感を感じた。 月末に振り込まれていたあの 100万は彼女から奪ったものなのでは無いのかと。 もし仮に私の考えていることが 妄想ではなく現実に起こっているのなら 私はショウに振り込まれたお金を 現に使ってしまっている…… ショウが汗水流して稼いだお金ではなく 他人の命を奪ったお金だと考えると 財布の中に入っている札束に 恐ろしくて近づけない。 ましてや ショウの犯罪行為に知らず知らずのうちに 加担してしまってるのではないかという 見ず知らずの恐怖。 私が逮捕されることにより 娘を手放してしまうことになるのではないかという 得体の知れない怖さが 私に振りかかって それがショウに電話をかける衝動へと 変わっていく。 ただ何回かけても結果は変わらず ショウが電話に出てくれる事は 一切無かった。 その後は 共有口座に残っている 残金を"なるべく"使わないように していたがどうしても困ったときは 仕方なく引き出しする生活を送っていて 残りが50万を切った頃 またお金が手元に無くなったので 引き出そうと銀行のATMに 暗証番号を受け取って 引き出し額を入力しようとした時 私は目を疑った。 アニメのようにその表示された数値を見て 目を擦った。 何度も何度も。 液晶には1000万という 今までに見たことがない数字の羅列が 並んでいる。 私は口元が震えだしては 目が瞬きを忘れるほど 呆気いや、呆然と立ち尽くしてしまった。 そして脳裏にまた嫌な妄想が広がりだす。 ショウは再度知らない女性を殺したのではないのか。 被害女性から強奪した金額をまんま 共有口座へ振り込んでいるのではないか。 私は銀行から逃げ出すようにして 足早に後にし 自宅に帰っては すぐにリビングに行きテレビをつけた。 そして昼間の時間から放映している 情報番組を漁りに漁って 他殺報道がされていないか 確認する。 「えー、昨日の18時頃こちらのホテルで女性の変死体が見つかりました。女性は20代で洋服は全て脱がされており、臀部には何者かに噛まれたあとがあるとの事です。また死因は窒息死との事でした。」 1つのテレビ番組が 他殺報道をしていた。 リポーターからの臨場感のある 状況説明に耳を傾けるように 集中して一言一句を聴き入った。 そして聴き入ったあと噛みつきグセは シュウの性癖である事を思い出した。 かくいう私もシュウと夜の営みをしている時に急に私の臀部に噛みつきだして 私が痛い!と伝えて シュウの身体を軽く叩いたのを覚えている。 本人は臀部は噛みつきやすくまた 跡も付きやすい為 満足感を得やすいと 絶対に理解できない性癖を持っている 変人なんだと白い目で見た事も思い出された そして以前に殺された彼女も 確か噛みつかれた跡があると 後のニュースで流れていた。 「犯人は今もなお逃走中です」 テレビから追記の情報が 私の耳に入る。 犯人の特徴が報道されない以上 シュウがやったと 断言は出来ないが 99,9%犯人であると 脳内では結論を出していた。 誰かを殺すたびに 共有口座にお金が入ってくる 旦那が何を目的に そんな非道的行動をしているのかは 分からない。 今にでも殺人を辞めてほしいと願っているが 捕まった途端収入源が無くなる。 だから私はシュウの行動を黙って 見届けることしか出来ない。 そして振り込まれたお金を引き出しては 毎回申し訳ない程度に 胸の中で合唱してから 食費などに充てている。 だから娘が今 霊が視えているという発言は シュウが殺した 女性たちの怨霊がこの部屋に集まって 旦那を探して彷徨っているのだと 非現実的ではありながらも 理解した。
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