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「絶対、訴えてやる」
夕暮れの河川敷で私、冬月夜(ふゆつき よる)は、大きな声を上げた。
膝上丈スカートの制服を着て、身体をロープで縛られた状態のまま、川岸を一人で歩いている。
私を拘束する長いロープの先には、祓い屋の青年、神月樹(かみつき いつき)が隠れていた。
「どこへ訴えるんだ? 相手は幽霊だが地獄の閻魔大王に裁きを頼むのか?
あんたが着ている女子高の制服は、ストーカー霊を誘き寄せるために必要な衣装だし、ロープは川に落ちてしまった場合に備えた命綱だ」
遠くから樹は、それらしい説明をする。
理屈が通っているように聞こえるが違う。
「うそだよ。私を逃がさないためでしょ?
溺れないための命綱なら、腕も動かせない程きつく縛る必要なんてないからっ」
ロープで両腕ごと身体を縛られているから、バランスが取りにくく、川岸を歩くのに苦労する。
「……せっかく喰いついた霊に逃げられたくないからな」
そっちが本音だろう。
つまり、私は、樹が幽霊を誘き寄せるための餌だった。
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