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「あっ、夜ちゃん」
希さんが嬉しそうに廊下を駆け寄ってくる。良かった、元気そうだ。
「今週末、陽の家で鍋パーティするんですけど、一緒に行きませんか?
月ちゃん自慢の鍋で、すごく美味しいんです」
希さんを誘うと彼女は、驚いたような表情で、
「私も行っていいの?」
遠慮がちに、だけど、嬉しそうに訊ねる。
「はい。私たち3人の意見です。月ちゃんは、希さんじゃないと相手にならないって言ってました。私じゃ全然勝負にならなくて、あっ、オセロのことです」
「そっか。じゃあ、お邪魔しちゃおうかな」
希さんは、嬉しそうに応えた。
あの一件以来、希さんが自然に私の目を見て話すようになった。
彼女の嘘を見抜けなくなっちゃったけど、まぁ、いいか。
希さんも心境が変わったのかもしれない。
「この前、大槻くんが言っていたんですけど、鬼門と同じで、鬼って味方につけると強運を得るらしいんです。だから、考え方次第だなって思ったんです。確か、疑心暗鬼の反対みたいな諺(ことわざ)だったんですけど……」
「過ぎたるは及ばざるがごとし。かな?」
「たぶん、それです」
私が笑顔で応えると、希さんも笑っていた。
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