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ふたりきりで暗がりに入ると鬼に遭う。
高校生の私、遠野夜(とおの よる)は、嫌な噂話を思い出しながら暗い道路を歩いていた。
下校が遅くなった帰り道、女の子の一人歩きは危ないからと同級生で密かに想いを寄せていた少年、陽(よう)と一緒に帰れるのは嬉しい。
だけど今、私たちは、ふたりきりだ。
街灯の少ない暗がりの道、噂通りなら、鬼に襲われてしまうかもしれない。
嫌な想像を振り払うように私は、ぶんぶんと首を横に振る。
ただの噂話、気にすることじゃない。
自分に言い聞かせていた。
「夜、どうしたの?」
陽は、不思議そうな表情で、私の顔を覗き込んだ。
月明かりに照らされた女の子のように綺麗な顔が近くなり、頬が熱くなる。
って、そうじゃない。
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