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「月見」×「神様」
おじいちゃんが亡くなった。
辺鄙な山中に小さな小屋を立て住んでいたから、亡くなってからの発見が遅れた。
父さんが喪主になり小さな葬式を済ませた。
遺品も無く、仙人みたいな暮らしをしていたようだ。
小屋辺りの土地は山の持ち主から買っていた。
僕は一人で小屋を壊して更地にして、山の持ち主に売るつもりだ。
屋根にローブを繋ぎ引っ張ると、小屋は簡単に倒れる。
小屋の残骸を焚き火で燃やした。
夕方には全て燃やしてテントを立て、焚き火で鍋に水を入れてインスタントラーメンを作る。
新発売の増税メガネラーメンだが、良い香りが辺りに漂う。
中空には満月が浮かぶ。
月見ラーメンだ。
ふと、隣を見ると誰か居た。
驚いたが冷静を装い尋ねた。
「あなたは誰ですか」
「いや、美味しそうな匂いに引かれたのさ」
凄い老人だが威厳が有る。
「おじいさんの知り合いの方ですか?」
「ああ、知っている、話し相手だった」
「亡くなりましたよ」
「えっ、知らなかった」
急に老人は涙を流した。
「もっと話したかった、今夜も話そうとやって来たのさ」
「この前、話されたのはいつですか」
「一年くらい前かなあ」
「そうなんですね」
「ところで何を食っている」
俺はラーメンの鍋を差し出した。
「よかったら食べてください、はい、割りばし」
「悪いな」
一口食べたら箸が止まらない。
「あっ全部食べてしまった」
「いや、大丈夫ですよ」
老人は立ち上がり何か品物を差し出した。
「これは何ですか?」
「食べ物の礼だ」
竹の水筒みたいだ。
「何ですか、これは」
「栓を開けて行きたい場所を言えば瞬間移動するのじゃ」
「えっ、あなた様は、いったい誰」
「神だ、これで宇宙空間や月に行くと人間は死ぬ」
さらば
神様は姿を消した。
俺は、恐る恐る竹の水筒の栓を抜いた。
「オーロラを見る場所に行きたい」
瞬間に頭上には綺麗なオーロラが見えた。
何て神秘的なんだ。
しかし、極寒の寒さだ、体が震えだした。
このままだと凍死してしまう。
竹水筒に日本に戻りたいと言ったが、喉が冷気にやられたのか声が出ない。
「しまった、俺は死ぬのか、涙が出たが涙が凍り付く」
誰かが手を握った、見ると先ほどの神様が居た、
「神様」
すぐに瞬間移動して元の山中に居た。
「お前はバカか、死ぬと言っただろう、これはやれないな」
神様は姿を消した。
うちの、おじいさんも、これで亡くなったのかもと思った。
空には満月が輝いていた。
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