42.再戦

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42.再戦

   異変種のゴーレムは、以前発見した沼地よりずいぶん離れた場所に居た。  今回は岩場を住処にしており、姿も泥から岩をまとった物になっていた。  その様子を確認し、二人は態勢を整えるべく一旦その場を離れる。 「で? どうやって倒すんだ」 「倒し方は調べてきた。プラドにはコレを持っててほしい」 「……移転魔道具か?」  ソラがプラドに渡したのはやはり水晶。  しかし壊れかけの物とは違い、使い古されてはいるが大きな傷などは見当たらない移転用の水晶だった。 「魔力支配の能力を持つ魔物用に作られた魔道具だ」 「……魔力支配の干渉を受けないようになってるのか」 「あぁ。ギルドからの借り物だから大切に扱ってくれ」  それなりに高価な魔道具なので壊せば当然弁償だ。  そんな大切な水晶をプラドに預け、ソラは魔法陣を展開して自身の攻撃力を向上させる。 「私に何かあった時はすぐに使ってくれ。それと、万が一の時は……」 「そん時はまた担いで逃げてやるから心配するな」 「……ふむ、頼む」  簡単な作戦を話し合ってから、再び二人は慎重に足を進めた。  岩場に身を隠し、ゴーレムの背後から少しずつ距離を詰めていく。  そしていよいよ射程距離まで近づいた時、ソラは静かに深呼吸をする。  プラドはそんなソラを黙って見守り、いつでも発動できるよう水晶を握りしめた。  触れ合っていた肩が離れ、岩場から体を出した瞬間── 「ぅお……っ!」  ──すべてが終わった。  思わず驚きの声が出るほどの凄まじい爆破音と衝撃波があり、ガラガラと細かくなった岩が落ちてくる音が追って聞こえた。  砂煙が立ち込める中で攻撃をしかけたソラが地面に座り込んでいるのが見え、プラドは慌てて岩陰に引っ張り込む。 「おい! 大丈夫かよ!?」 「あぁ、もう終わった」 「終わった……のか?」  プラドにされるがまま岩陰で胸の中におさまったソラは、プラドを見上げて何事もないように言う。  岩の崩れる音と砂煙が収まってきたので、プラドはソロソロと警戒を解かずに岩陰から顔を覗かせてみる。  そこにはもう何もなく、岩とゴーレムがあった場所は更地になっていた。 「……確かに終わってるな」 「ふむ」 「魔力支配の魔物を討伐する方法って、これか?」 「そうだ」  つまり、相手に気づかれて魔力を支配される前に、攻撃魔術を魔物の核に一点集中させて破壊する。  言うのは簡単だが、気づかれる前に先制攻撃する速さと、核に的確に魔力を叩き込む魔術操作と、一度で完全に破壊する莫大な魔力がなければ成立しない。そのどれか一つでも欠けたら失敗なのだから。  なんともソラらしい戦い方だ。 「……ったく、ますますとんでもないヤツだ」  呆れるやら悔しいやらいっそ清々しいやらで、やはり複雑な心境のプラドは立ち上がって綺麗さっぱり更地になった元岩場を眺める。  そしてソラは問題なく倒せて安堵したのか、座り込んだまま岩に体を預けて上を向き、大きく息を吐いた。  その間にプラドがゴーレムの核を探し出してくれて、ソラは礼を言い受け取る。 「……つか、こんなに早く倒せるなら早朝に集まる必要あったか?」 「長く一緒に居られる」 「ぅんん……っ ごほっ」  不自然な咳と、見つめるソラ。 「おまっ……いきなりぶっ込んでくるんじゃないっ!」 「ぶっ込……? すまない?」  心臓がもたんだろっ、と怒るプラドにソラは首を傾げ、やはりプラドの怒りのポイントは分からんなと受け取った核をバッグにしまう。  砂煙もおさまった更地は風通しが良くなり、さらさらと心地よい風が吹く。  まるで先程まで忌々しいゴーレムが居たのが嘘のように穏やかな時間が流れ、太陽の日が眩しいほどに二人を照らしてプラドは…… 「…………おい。魔力をありったけぶつけたって事は──」 「ふむ……プラドすまないが──」  だっこ、と両腕を伸ばすソラに「ん゛ん゛ん゛……ッ」と胸元の服を握りしめて悶絶するプラド。  プラドは「背中を預けられる」と言われ浮かれたが、信用されすぎるのも問題だと学習しながら震える手で抱きしめた。  
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